自社開発かツール導入か AI運用の判断を整理し記帳業務を効率化した税理士法人ASCの事例
税理士法人ASC
事務所詳細記帳業務の効率化を進める中で、「AIをどう活用するか」に悩む事務所は少なくありません。特に、自社で仕組みを構築するべきか、専門ツールを導入するべきかは判断が分かれやすいポイントです。税理士法人ASCでは、実際にAIの自社活用も検討・試行したうえで、最終的に専門ツールであるTaxSys(タクシス)の導入を選択しました。
その背景には、イレギュラー対応や運用負荷といった実務ならではの課題がありました。
本記事では、自社開発を検討したからこそ見えた判断のポイントと、導入から約2ヶ月で社内に定着させた運用の工夫について紹介します。
自社開発も検討する中で見えた、AI運用の現実
税理士法人ASCでは、記帳業務の効率化に向けて、AIの活用を前提とした運用の見直しを進めていました。当初は、Googleの生成AIを活用し、領収書データを読み取らせることで記帳業務を自動化する方法も検討していました。プロンプトを設計すれば一定の処理は可能であり、自社で仕組みを構築するという選択肢も現実的なものとして捉えられていました。
しかし、実際に試行する中で見えてきたのは、イレギュラーなケースへの対応や、精度の維持・改善にかかる負担でした。単発の処理はできたとしても、日々発生する多様なデータに対して安定して運用し続けるには、継続的な調整や検証が必要になります。また、本業である税務業務と並行してAIの検証や改善を続けることは、現実的には大きな負担となります。開発だけでなく、運用・メンテナンスまで含めたコストを考えると、自社で完結させることの難しさが見えてきました。
こうした背景から、「自社で構築するのではなく、専門のツールを活用する」という選択肢が現実的なものとして浮上してきたといいます。
自作ではなく専門ツールを選んだ「餅は餅屋」という判断
自社でのAI活用を検討する中で、最終的に選ばれたのが、専門ツールであるTaxSysの導入でした。
判断の大きなポイントとなったのは、イレギュラーなデータへの対応力と、運用負荷の軽減です。自作のプロンプトによる処理では、想定外のケースが発生した際の修正や精度の維持に手間がかかり、安定した運用を続けることが難しいと感じていたといいます。また、AIを活用した仕組みは一度作れば終わりではなく、継続的な改善とメンテナンスが前提となります。本業である税務業務と並行してそれらを担うことは現実的ではなく、結果としてトータルコストも大きくなる可能性があったといいます。
その点、TaxSysは記帳業務に特化した機能を備えており、実務に即した形で利用できる点が評価されました。加えて、最新の技術動向に対応しながら継続的に改善されていく体制が整っていることも、導入を後押しする要因となっています。
こうした理由から、「自社で構築するのではなく、専門のツールに任せる」という判断に至ったといいます。いわば“餅は餅屋”という考え方が、導入の決め手となりました。
スモールスタートと成功体験の共有で進めた社内浸透
新しいツールの導入において、大きなハードルとなるのが社内への定着です。税理士法人ASCでも、運用変更に伴う現場の負担や心理的な抵抗は避けられない課題でした。
そこで最初から全体展開するのではなく、まずは限られたメンバーで試験的に運用を開始。実際に使いながら「どのように使うのが効果的か」という型を固めたうえで、徐々に社内へ展開していくスモールスタートの形が取られました。
社内への共有方法にも工夫が見られます。週初めの朝礼で導入内容を周知し、週末の報告では「実際に使って便利だった事例」を具体的に共有。ツールの使い方だけでなく、現場での成功体験を可視化することで、他のメンバーにも利用のイメージが広がっていきました。また、記帳業務を担う部門の責任者が中心となり、現場スタッフへの利用を促進したことも、浸透を後押しする要因となりました。トップダウンでの指示ではなく、現場レベルでの納得感を重視した進め方が、スムーズな定着につながったと考えられます。
こうした取り組みにより、導入から約2ヶ月という短期間で、多くのスタッフが日常業務の中で活用できる状態まで浸透しています。
導入2ヶ月で定着 時短と満足度の向上を実現
TaxSys導入後、最も大きく変化したのは、記帳業務にかかる時間と作業負担です。
通帳やクレジットカードのデータ処理は当日中に完了するようになり、これまで発生していた待ち時間や作業の滞留が解消されました。データの精度については一定の確認作業は残るものの、元データが整うことで全体の作業効率は大きく向上しています。また、導入から約2ヶ月という短期間で、多くのスタッフが日常的に使いこなせる状態まで浸透しました。運用の変更に伴う負担がありながらも、比較的スムーズに定着した様子がうかがえます。
コスト面においても、外部ツールの使い分けや手作業中心の運用を見直したことで、全体のコスト構造が整理されました。さらに、導入後のサポートや改善対応についても継続的なフィードバックとアップデートが行われており、運用を共に最適化していく関係性が構築されています。
こうした取り組みにより、単なる作業の効率化にとどまらず、現場全体の生産性と満足度の向上にもつながっています。
AI活用で「作業」から「価値提供」へ 税理士業務の再設計
TaxSys導入によって記帳業務の効率化が進んだことで、税理士法人ASCでは次のステップとして、業務全体の在り方を見直す取り組みが進められています。
これまで時間を取られていた領収書処理や入力作業をAIに任せることで、税理士自身のリソースを顧問先とのコミュニケーションや提案業務へ振り向けていく方針です。単なる作業の効率化ではなく、「税理士が本来担うべき役割」に集中できる環境づくりが進められています。また、今後はデータの蓄積と活用にも注力していく考えです。顧問先ごとのデータを一元的に管理し、AIを活用することで、前年比較や経営状況の分析といった付加価値の高いアウトプットを標準化していく構想も検討されています。
こうした取り組みが進むことで、スタッフのスキルに依存せず、一定水準のサービスを提供できる体制づくりにもつながると考えられます。業務の効率化と標準化を両立させながら、より高いレベルで顧問先を支援できる組織への進化が期待されます。
TAXGROUPから見た税理士法人ASCの取り組み
AIを活用した業務効率化が注目される中で、「自社で仕組みを構築するか」「専門ツールを活用するか」という判断に悩む事務所は少なくありません。今回の税理士法人ASCの事例は、その判断を現実的な運用の観点から整理している点に特徴があります。
実際に自社でのAI活用を試行したうえで、イレギュラー対応や運用負荷といった課題を踏まえ、「専門ツールに任せる」という選択に至ったプロセスは、多くの事務所にとって参考になるアプローチといえます。また、単にツールを導入するだけでなく、スモールスタートによる運用設計や、現場での成功体験の共有を通じて社内に定着させている点も重要です。ツールの選定と同時に「どう使うか」を設計することで、短期間での活用定着と業務改善につなげています。
このような取り組みは、すでにAI活用を検討している事務所はもちろん、「自社でやるべきか、外部に任せるべきか」で悩んでいる段階の事務所にとっても再現性のある考え方といえます。
TAXGROUPでは、TaxSys(タクシス)をはじめとした仕組みを通じて、こうした業務の最適化を支援しています。単なるツール導入にとどまらず、事務所ごとの運用に合わせたデータ管理や業務フローの設計まで含めてサポートしています。
もし現在の運用に少しでも課題を感じている場合は、ぜひ一度ご相談ください。事務所の状況に合わせて、無理のない形での改善方法をご提案いたします。
今回の事例はYouTubeで動画公開もしています。動画もぜひご覧ください。
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